この本は著者が過去のイギリスでの滞在を生かした.著者による洞察である.
伝記のようであり,イギリスを「言葉」をテーマに聞いた話や自分の経験を通してまとめようとしている.
科学的な
エビデンスやデータ量というのはあまり出てこず,書かれた年代もイギリスが
EU脱退前のものだったりするので参考程度に読んだ.
とは言え,イギリスの移民に対する意識が読み取れる.どういう経緯がイギリス内であって,移民を考えているのかがとらえやすくなったかもしれない.たとえるなら,真っ白だったキャンパスに印象的なぼやけた絵が描かれたイメージだ.
イギリスの言葉について
- please,thank youを大切にする
- 職業的な身分に関わらず,言葉を扱うのは対等である
- 常に丁寧な言葉で,相手の意思を伺うような方法
- 何か失敗を犯しても,周囲は執拗に追及はしない.本人は言い訳をきっちりと言えるようにする
- その時の失敗は事実として残ればよい.それよりも今後の関係のほうが大事
日本では本人が言い訳をして,それを周囲が認めるというのが捉えにくい価値観かもしれない.その場が収まればいい,今後も一緒にやっていきたいという発想が面白い.
日本であれば失敗した者は反省と謝罪を求められる節があるように感じる.そして周囲が場合に応じて,本人の代わりに言い訳を作るのが多そうだ.
イギリスの学校
- かつては生徒は聞かれたときだけ返事をすればよいとされた
- 今は話すことを重視している
- 円形になって,自分たちの意見を述べるような空間や時間を作っている
- すべての能力を高めるのではなく,得意なものを伸ばしていくように教えられている
- 生徒ばかりでなく,教師を主役にして褒める
先生が褒められる対象となるのは大事かなと思う.やっている学校はあるのだろうし,それを先生同士で認めている職場もあるだろう.主役は教師だという見方があってもいいのかもね.
イギリスと言えば幼い労働者を効率よく使うために,雇う側が子供に教えていた節がある.しかし,それはかなり昔の話で変わっているのだというのは理解できた.
イギリスの町
- 近隣住民との協力を行っている
- 家を留守にするときに代わりに見てあげたり.困ったことがあったら助け合う.
- 近隣の人とのコミュニケーションは大切のようだ
ここら辺は日本とも変わらずな雰囲気がある.協力している近所関係の人もいるだろう.
最近の動向
- 近年ではスマホやPCの出現で,子供の読み書き能力が下がっている
- TVやメディアによって言葉使いが前よりも軽くなっていることを嘆いている
- 移民政策は国が多文化主義に変容するというよりは,移民がイギリスの文化に同化してほしい
日本人が最近の若者は~で言っているのと、変わらない状況があるんだなと見て取れる。最新技術によって失われてしまうコミュニケーションの質の向上を意図的に図っていきたい。
まとめ
イギリスと言えば,自分の時間を大切にして多くの人と関わろうとしないイメージがある.本書でも人間関係で言葉の扱い方に気を使うので,仕事でもかなり気を使うと書かれていた.日本とは違った意味で気を遣う文化だと思う.
本書ではイギリスの言葉を大切に扱う部分を主軸にして,日本にも見習う部分があると伝えられていた.見習うとしたらthank you, pleaseあたりだろうか.sorry manと呼ばれてしまう,謙虚に徹する日本人の気持ちもわかる.
どちらも扱っていけばいいように思う.世界と文化的につながっていくことを考えていくなら,いい部分をどっちも取りたい.
*1
thank you, please sorryをまんべんなく使うとしたら
どちらも使ってみると考えると経験値が無いと難しいことが分かった。
thank you
- 頼まれごとをしてくれた
- 親切にしてくれた
- 思いやりのある言葉を掛けてもらった
やってる人はいるけれど、改めてここら辺を堂々と言ってみると良いかもしれない。
please
日本人はpleaseの前にsorryを置きたがるのかもしれない。
イギリスの人がpleaseを使うときの感覚が分かれば、詳しく見れそうだ。
「お願いします」と懇願しているのか、「お願いします」と協力し合うのが当たり前だから言っているのか。そこら辺が掴めない。
sorry
理想的な扱い方を書きました。本当は思ってないのに「すいません」と言うのは事象としてあるけど、それは今回は省きます。
失態をしたときに言えば、相手が改善してくれると思えて良好な関係を築ける。何度も同じミスをすると難しいのかもしれないけどね。
表情
言葉を言うときの表情も大事なのかなと思う。
「ありがとう」と慈しみの表情で言われると、「すまない」という感情も同時に読み取れるので言葉だけがコミュニケーションツールではないように思う。
イギリス人が言葉を使うときの表情にも興味が出てきた。