トラウマの克服でSF現象は解かれる「青春ブタ野郎はバニーガール先輩の夢を見ない」

 

「青春ギャルゲ」×「SF(ミステリ)」の作品だった。

感動した。思春期にある悩み解決ものとして楽しめたのと、短編ごとにSFを出して障害として扱っているのが個人的に良かった。どういう作品だったのか分解していく。

大雨の夜にすべてを流して

大雨の夜にすべてを流して

  • 発売日: 2018/11/25
  • メディア: Prime Video
 

ギャルゲ特有の色々なヒロインが出てくる展開は、恋愛シミュレーションの娯楽としてはいいんだろうけど、作品に入れ出すと締まりが悪くなりそうで感動の薄い作品になるんだろうなと思った。

けれど、テーマとして複数のキャラクタを出すのは正しかったと感じた。別に女性のみではなくて、男性のキャラクタを登場させて深堀しても良いと思ったけど。これは作者の好みであるギャルゲリスペクトなのか。元々ライトノベルだし、小説の表紙が二次元美女の方が売れるからなのか。

テーマは「トラウマの克服」だった

複数のヒロインが抱えているトラウマだったり恐怖を、主人公が介入しながら解決していく。そうしてヒロイン達は元の日常に戻っていくというのが物語の毎回の流れだった。主人公は一緒にいて助言をする程度で、ヒロイン自身が困難に立ち向かい、解決の糸口を見つけている。主人公の目線から語られる彼女たちが本当の主人公だと途中から気づいた。

この物語全体を通して作者は「あらゆる人がトラウマを抱えていてそれに向き合っているのだ」という事を伝えたかったのだと思う。裏のテーマとしては「悩んでいる人の話を聞くだけだったり、背中を押すだけでも役に立つのだ」という事を伝えたかったようにも感じた。傍に居てくれるだけでも心強かったりするものだ。

スパイスの要素として、恥ずかしさの感情(大げさ)もあった。これは青春要素として学生感を出すためのものだろう。他の人には知られたくない考えを人に覗かれるのは、それが善意や好意である時に恥ずかしいものだ。そういうほっこりとするような恥ずかしさが甘かった。

SF要素もきっちりと入れ込んでいる

これだけだと理不尽な運命に抗いながら学生生活を楽しむ人たちの作品になる。そういう作品はありふれている。たぶん。あれば読むけど。*1

そこにSF要素を入れることで、特殊な設定にしてやろうと考えたんだと思う。*2

存在が認識されない病にかかったり。目的を達成しないと1日が進まないループ物だったり。意識が乖離して二人の人間が現れるようになって、どうやって一人に戻るかだったり。身体が誰かと入れ替わったりと、、、厳密にはサイエンスファンタジーではないのかもしれないけど、どうしようもない状況に陥ることをSF現象に取り込まれる描写で表現している。この表現の仕方が最高に好きだ。

その現象はトラウマを解決すると同時に解消される。

どんな現象なのかが隠されていたり、解決策が不明な状態で話が進んでいくので謎を残しつつ、次が知りたいと思わせるのが良かった。次の話が知りたいと思わせるには、ミステリ要素を入れるのが良いというけど本当にそうだと思った。

この物語をどのように作ったのか想像してみる

感動した作品がどのように作られたのか考えることで、自分も作れないかなと甘い期待をしつつ。想像してみる。この作者がやったことは

  1. テーマを決める
  2. 「トラウマの克服」をテーマとして短編物語を書いて集める
  3. テーマに対しての自分なりの回答を決める「みんなもトラウマに向き合っているのだ」「副題:傍にいるだけで心強いのだ」
  4. 主人公が各キャラクターのトラウマ解決に付き合う形で描くことに決定する
  5. (何らかの意志で)メインキャラクターは全員女性にする

その基礎があって、次にアクセントを入れる

  1. 学園要素を入れよう
  2. 学園にありがちな話を集める:青春要素とか
  1. SF要素も入れよう
  2. SFぽい現象を書いて集める
  3. 各話ごとのキャラクターが原因であることにする

こんな感じかな。テーマに沿って短編を集めたり、SFネタを予めメモっててそれを混ぜて作っていそう。

電気羊を参考にした作品?という感想を見た

感想をめぐっていると、ここでも「電気羊」の話が上がってきていた。やはりSF名作は読むべきかな、、(笑)

フィリップ・K・ディックの物語が面白いのは知っている。同じくAmazonプライムで短編映画集を見ていた。でも、やっぱり濃厚すぎる感じがするんだよな。珍しい食材をそのまま出されたかのような感覚になる。それをもっと楽しむ上で、今回の作品はラノベみたいな世界観と合成させて、日本人好みに作ったって感じなのかな。

地図にない町

地図にない町

  • メディア: Prime Video
 

アンドロイドは電気羊の夢を見るか?」自体をまだ読んでない。読むと世界観がまた変わりそうな作品だ。気が向いたら読もう。その日を楽しみに待とう。来年までには読んでるんかな。

*1:一周回ってありかもしれない。重松清あたりが重厚に書いてそう。

*2:化物語シリーズに近い印象も受ける。あれも「理不尽な運命に抗いながらも学生生活を楽しむ+呪い」の話だった。