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「頭のでき」を読んだ

頭の良さは遺伝なのか。環境なのか。現在はどちらの影響もあると考えられている。この本は、遺伝だと諦めずに環境を良くしていこうという目線を持たせてくれる本だ。

心理学者が書いており、学校教育や自主学習の方法へのヒントが得られた。

頭のでき―決めるのは遺伝か、環境か

頭のでき―決めるのは遺伝か、環境か

 

前半は「知能は生活環境によって依存する側面もありますよ。」と語っていた。

「遺伝によって完全に左右される」と強調している研究に対して、矛盾する研究結果があることや研究によって結論づけられた論理が間違っている点を指摘している。優生学の暴走で起こった悲劇が再び起こらないように、釘を刺しているんかな。

家庭環境による知能向上の差

こどもの頃の家庭環境がひどく、知能が向上する時期に知的な刺激が足りていないと成長時に知能発達が遅くなると繰り返し注意し、色々な研究結果からの考察で教えてくれる。また、幼児期に知的な活動をした場合に知能が向上する研究も取り上げている。

大学でも幼児教育の授業を受けていたのである程度は知っている事実であった。赤ちゃんが居て喋りかけてもいい場面なら、たくさんの語彙を使ってみるといいようだ。やってみよう。

大学で学ぶことで知能の差が埋められる

これは研究対処になったアメリカ地域の話なので、日本ではまた違ってくるのだろうかと考えている。

話に上がっていたのは、黒人が「黒人は勉強できない」というステレオタイプ(固定概念)に高校では感化されてしまう。だが、大学ではそれに対して比較的対抗しやすいからだと理由づけていた。

大学に進む人では、「知能は遺伝ではなく、努力によって獲得するもの」と捉えている人の割合が多いのかもしれない。生活で関わる周りの人が持っている、知能に関する捉え方が大事だと推測できる。

東洋文化で栄えるには

東洋文化は西洋に比べて、家族や集団を大切にしたり協調性を重視する文化が根強いようだ。同調圧力があって、もしその圧力が正しい方向を指しているなら良い効果を発揮するかもしれない。

著者は、ユダヤ人に成功者が多い理由として「同調性」と「知的価値を重視する」を挙げていた。東洋文化には「同調性」がもともと備わっているので、「知的価値を重視する」ことで多くの成功者を排出するかもしれない。

効果的な指導法、1on1

  • コントロール感を持たせる
  • 能力の範囲で挑戦させる
  • 生徒に自信を持たせる
  • 好奇心をもたせる(ヒント:ソクラテスの問答法)
  • 文脈を与えて関連付けさせる

 誰かに物を教えるときに心がけてみよう。とは言え実践あるのみか。脳内シミュレーションで思考実験してみるのもいいかもしれない。メンタルモデルをあらかじめ設定しておこう。

共同学習

効果的な学習として、2つ取り上げられていたが片方が気になったので取り上げた。

共同学習:2人で学習するスタイルだ。1人が学んだことを教える役となり、もう一人が生徒役になる。これを交互に入れ替えることで学習していく。

自分の言葉で置き換えて記憶すると定着が早まる。学習に関する研究が多く紹介されていて、実践に役立つ本としては下のがお勧め。

使える脳の鍛え方 成功する学習の科学

使える脳の鍛え方 成功する学習の科学

 

さいごに

学習に関する知識を提供する本として、興味深い考察が展開されていた。前半では遺伝によって知識が決まってしまうことを否定してくぎを刺し、後半では教育に関する研究を著者の直感と考察によって推理していた。

すべての子どもの親が、知能を向上させる術と選択肢を知っていたら教育の仕方や環境整備も変わるのだろうか。個人的な問題の側面と、政治的、社会的な側面、地域的な側面で考えていく問題だと感じる。

個人で出来ることを考える。「知能は遺伝によって完全に決まる」と言う誤解を解く。勉強がしやすい環境や作業がしやすい環境のデザインの在り方を考えたり、工夫したり配慮していく。こういった取り組みで知的価値を重視した取り組みをしていこう。*1

*1:毎回同じ話を言うのではなくて、アレンジを加えたり話内容を増やしていくことで幅を持たせると飽きないかな。

それを考えると、教師という職業や教え続ける業務は、同じ発言の繰り返しばかりで、自分の発言に対して自分が飽きてしまいそうだ。関連話を集合知として取り出しやすく管理して、提供したら教えるのが更に楽しくなるだろうか。

例えば、ある業務を覚えてもらうときに、過去に起きた失敗の話集や成功体験談をあらかじめ集めておいて、業務作業を教えるときに幅を持たせる。

子どもに教えるときの例えを、全国規模で収集することで、違う都道府県の話題を入れて視野を広めてもらうとか。別の話題と関連させて覚えやすくする。